今回は、よくネットなどで見かけるリモートワークは、新人育成等には不向きだとの記事や論評について、私が4年間経験した実績を元に、述べさせて頂きたいと思います。
結論を先に述べさせて頂くと、決して無理ではないという事です。ただし、しっかりとした仕組みを構築する必要があるというのが、条件になります。条件については、項目毎に記載させて頂きます。
なお、今回述べさせて頂く事になる対象業務は、経理業務となっております。お客様対応が必要となる営業業務などの場合は、お客様側の要望もあるので、変わってくると思います。
新人受入時の確認項目
私がリモートワーク期間中に経験した新人採用のケースは、派遣社員の増員になります。ただ、過去の経験を踏まえた感想では、新入社員の場合も転入者の場合も育成という視点からは、同様と感じております。
ITスキル面の確認項目
- 光回線のインタネット回線環境が整っている(1G以上のスピードが推奨)
- Wi-Fi環境が整っている
- パソコンをインターネットに接続(有線・Wi-Fi双方)させる事ができる
- インターネット接続が切れた場合、原因を特定させる事ができる
- 自宅のインターネット接続が障害等で使用できない場合、スマホ等の4G又は5G回線を使ってテザリング接続ができる(緊急対応用)
- Windows等の各種設定が出来る
- Microsoft Office等のビジネスソフトを使える
- マニュアル等を見ながら新しいアプリを、パソコンへインストールできる。
- Web会議アプリやチャットアプリ等を使用できる
- パソコンの動作が不安定になった時、ある程度の原因特定ができる
- パソコンが故障した場合、他のデバイス(スマホ・タブレット)を使い、報告ができる
- ペーパー資料ではなく、ファイル化された資料を使用し、同様の作業ができる
作業環境面の確認
- 自宅で作業スペースが確保できる
- 自宅の周りに仕事の妨げとなる騒音などの不都合がない
- 同居家族等の関係で、仕事に常時支障を来たさない
- 在宅勤務の経験がある(必須ではない)
業務スキル面の確認項目
- 簿記3級以上の資格を有しているか
- 経理業務の経験がある(必須ではない)
- 作業等に対して能動的に取り組める
- 一人作業が苦にならない
- 何か問題が発生した場合、報告・連絡・相談が的確に実施できる
新人育成の手順
私の職場に新人が配属されてから、一通りの業務を開始するまでの準備・育成の方法を説明させて頂きます。
パソコン貸与時の対応
こちらの対応は、今のところ、会社へ出社して最終設定及び貸与という方法になっております。
その他には、必要に応じ、外部ディスプレー、マウス、外付けキーボード、電卓、ノート、ペン等の文房具類の貸与も行います。
ただ、私の友人が経験したケースでは、外資系の会社でしたが、ノートPCとスマホと設定マニュアルが業務開始の数日前に宅配で自宅に届き、設定マニュアルを見ながら自分で設定を行い、使用可能な状態にさせせておくケースがありました。この方法を聞いた時、リモートワークを前提とした採用としては、素晴らしい対応だと感心しました。今後のアクシデント等に対応可能か否かも、当初設定時点で判別可能ですし、本人の設定スキルも身につけさせる事が可能になるからです。
幸か不幸か、私の会社では、そこまでの試練を与えておりません。
業務内容の習得方法
リモートワークに必須となる機器(パソコン)の設定が完了した後は、具体的な業務内容の習得へ進む事になります。
業務概要説明
まずは、会社の業務概要説明を行います。これは、パソコン設定がスムーズに行けば、その日の内に職場で実施し、それが不可能な場合は、翌日、Teams会議対応の流れになります。これも、今後の在宅勤務時の意思疎通方法の練習にもなるので、良いと思っております。
業務内容の説明
出社対応業務の説明
出社しないと出来ない業務の説明は、原則、一週間程度を目処に、説明者と新人双方が出社し対面で作業内容を説明する事にしています。
具体的な出社対応業務は、郵便物の受領及び発送作業、郵便料金計器の操作方法、コピー機の操作方法、PDF化作業の流れ、書庫等の鍵の在処、職場のルール説明、請求書の発送方法等です。
リモートワーク可能業務の説明
メイン業務の大半は、リモートワーク可能業務にしているので、お互いリモートワーク環境からTeams会議で資料を画面共有し、システム操作方法や作業依頼資料の保管場所、処理結果の対応方法など、日常作業の流れを一通り説明していく事になります。
この作業は、パターン化しているので、支払処理・請求処理の流れを数件ずつ処理すると、大まかな流れを理解できるので、後は、実践ベースで作業を行ってもらい、承認者(管理者)が習得状況を確認していく流れにしています。この期間は、概ね2週間〜1ヶ月間程度になります。
この流れで、作業説明をしていますが、大きな問題が生じるような事は、過去発生しておりません。
これも、巷では、出社対応業務のように言われる時がありますが、仕事の流れをリモートワーク仕様に整備さえしておれば、リモートワーク下での業務説明も可能だというのが、私の実感です。
ただ、この方法が可能になる条件は、説明者と説明を受ける者双方が、一定のITスキルを有している事が条件になります。いずれかが、有していなければ、この方法は成立しません。
社員育成
こちらの育成は、新制度が導入されたケースや、新システムが導入されたケース等が、該当すると思うのですが、その業務が出社対応業務か在宅可能業務かによって、育成方法も選択しております。リモートワーク可能業務であれば、日々の作業の延長線でTeams会議などで対応しますし、出社対応業務であれば、出社対応する事になります。
また、ルールの理解度が低そうな場合も同様で、その業務の性質によって、使い分けております。
いずれにしても、管理者が部下の状況をどれだけ正確に把握できる仕組みを構築できているかに関わっています。なので、リモートワーク下では、作業の可視化と作業結果の可視化が非常に大事になります。
まとめ
以上、新人育成をベースに、リモートワークが始まってからの育成方法の変化を、実際の体験に基づき、記載させて頂きましたが、日常業務の仕分け(出社対応業務とリモートワーク可能業務)が的確に行われ、そのいずれもが、作業の可視化がされておれば、リモートワーク下でも、支障なく育成が行えるというのが、リモートワークを4年間経験した私の感想です。
リモートワーク下で育成は無理だろうとか言われているのは、作業の流れが出社前提のままになっているからで、リモートワーク仕様へ適正に変更すれば、なんら問題なく実行可能になると思います。それでも、上手く行かない場合は、リモートワーク仕様に問題があるのかもしれないので、見直し改善を行えば良いと考えております。
それよりも何よりも、上手く行かない最大の原因は、人的要因だと思います。一番多いのは、何れかのITスキル不足が原因です。これも、私の経験上ほぼ間違いないと考察しております。